【医師監修】『高血圧』予防のエッセンス〜「前高血圧」と「血圧測定のコツ」も含めて解説〜

予防

「両親が高血圧と診断されて・・・」

「職場の上司が高血圧をそのままにしていたら、脳梗塞を発症して・・・」

この記事では、高血圧だけではなく、その前段階の前高血圧や血圧測定も含めて、見逃しやすいポイントから高血圧を予防する方法まで、わかりやすくまとめています。

「高血圧になりたくない」

「最近、血圧の数値が気になる」

そのような方のために。

この記事を通して、高血圧のリスクを減らしていきましょう。

※この記事は、医師監修の下、適切な情報に基づいて作成されています。具体的な情報源に関しては、本記事下部の「参考情報」をご確認ください。

高血圧予防のために、知っておきたい5つのこと

「高血圧」とは、名前の通り「血圧が高い状態」が続く病気であり、一時的な血圧の上昇は含まれません。

ここでは、高血圧予防にために知っておきたい事柄を、5つに分けてまとめます。

1.高血圧は、症状ではなく「値で判断」する

「うちの親が高血圧持ちなのだけど、特に症状もないし、何が問題かよくわからないなあ」

はじめに、血圧と症状の関わりについて触れたいと思います。

皆さんの中に実感されている方がいるかもしれませんが、たとえ血圧が高くなったとしても、すぐに・・・症状が現れることは殆どありません

それもそのはず、血圧自体ですぐに症状が出るのは、かなり高い値です1

代表的なものに、血圧が高度に上昇することで、急速に臓器障害が進む「高血圧緊急症」と言われる病態があります。この場合の目安は診察室血圧で180/120mmHgですし2、180/120mmHg以上でも臓器障害がなく高血圧緊急症に該当しない、一時的な血圧上昇も多いと言われています3

高血圧の基準は遥かに低い値ですので、高血圧と診断されても、多くの場合、症状はすぐに現れません。

なぜ、高血圧の基準に達しても症状がすぐ出現しないのか。

それは、高血圧の基準は「症状が出現する血圧」ではなく「年単位でリスクが高まる血圧」として設定されたからです。

つまり、「血圧が高い状態が続くと、すぐに症状は出ないけれど後々のリスクが高まりますよ」ということなのです。

なので、高血圧でも症状がないことは自然なことであり、

「血圧が高いけど、症状がないからOK」と考えるのではなく、

「血圧のリスクは症状ではわからないので、血圧の値で判断しよう」と捉える

ことが血圧を考える上で大切なポイントになります。

2.【血圧測定】「正しく」測らないと「偽」の値が出る

「昨日、血圧を測ったらさ、すごく高い値が出て。たぶん何かの間違いだなって」

血圧とは血管にかかる圧のことです。

親指の付け根付近の手首を手で触れると「脈」を感じることができます。これは心臓が血液を全身に送り出すことで生じていますが、この時、血管には圧がかかっており、その変化を「脈」として感じているのです。

measuring pulse

血圧はまさにこの圧を測っているわけですが、通常用いる血圧計で測る場合、タイミング・部位・姿勢などによって血圧の値は変わります

  • 食事の前か後か、朝なのか夜なのか、運動をする前か後か
  • 上腕で測るか、前腕で測るか
  • 座って測定するか、横になった状態で測定するか

そのため、血圧を測る時は、余計な影響の出にくい正しい測定法で測ることが大切です。

下図は日本の高血圧ガイドライン4に記載されている「標準的な血圧測定法」のポイントをまとめたものです。

高血圧治療ガイドライン2019 日本高血圧学会を基にInefable作成

いずれも、血圧に一時的な影響を与える条件を極力取り除くことが目的です。

例えば、すごく寒い環境では血圧が一時的に大きく上昇することがあり、「いつもの」血圧ではない値を測ることになってしまいます。

高血圧というのは、一時的な血圧の上昇ではなく、血圧が高い状態が続いている病気ですので、血圧を測る時は「余計な影響なく測れているのか」ということをまず考える必要があります。

「昨日、血圧測ったらさ、すごく高い値が出て」

このような時は、「標準的な血圧測定法」でもう一度、測り直すとよいでしょう。

3.【血圧測定】「一時点・1回の測定」で判断しない

AMBP recording
ある人の1日の血圧の変化を示した図。横軸が時間(20時〜20時)で縦軸が血圧値。紫部分は夜の時間帯。
黒丸(●)がカフを用いて測定した血圧値であり、1日の変化を線でつないで示している。
上(高い方)が収縮期血圧、下(低い方)が拡張期血圧の値。
参考情報のFigure,4を転載(http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

上図は、ある人の1日の血圧を図にしたものです5。24時間自由行動下血圧測定注1)によるものですが、これを見ると「血圧が常に細かく変動している」ことがわかります。

先ほど述べたように、血圧は心臓から血液が送り出されることで血管にかかる圧のことです。

心臓は1分間に60-100回ほど縮んだり広がったり(収縮と拡張)を繰り返し、全身に血液を送り出しています。そして、そのたびに血管に圧がかかります。ですから厳密には、心臓が収縮拡張する毎に血圧の値は異なります。

私たちは日々の生活の中で様々な活動を行っており、精神的肉体的にも変化しています。たとえ「標準的な血圧測定法」を行なったとしても、血圧は常時、変動しているのです。

具体的な例を挙げると、ウェイトリフティングの最中には、収縮期血圧(上の血圧)が300-500くらいになることもあると報告されています6

血圧測定で知りたいのは、「一時的に低いあるいは高い値」ではなく「どのくらいの血圧の中で日々、過ごしているのか」ということです。

ですから、血圧を測定する際は、「一時点・1回の測定」で値を判断することなく、何度か測定して平均的な値がどのくらいかで判断するようにしましょう。

1度の機会につき原則2回測る」「数日(少なくとも5日間)の平均値を見る」ことは、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインにも明記されている、なるべく正しい値を得るためのポイントです7

ーーーーー

「血圧は、健診の時くらいしか測らないなあ」

高血圧の診断がされていない方は、年1回の健診の時に測定するだけ、という方も多いのではないでしょうか。

その場合、365日のうち1日、しかもその十数秒の血圧しか確かめていないということになりますので、健診の時の血圧が、自分の平均的な血圧を反映していない可能性もあります。

今は、ジムや薬局、役所など、病院・診療所以外の様々な場所で血圧を測ることができますので、血圧計が自宅にないという人でもたまに血圧を測り、自分の「平熱(普段の平均的な体温)」ならぬ「平圧(普段の平均的な血圧)」がどのくらいなのか、確かめてみることをオススメします。

もし、いつもと異なる値が出たとしても、

  • 特に体調が変わりなく、気になる症状もない場合には、時間を置いて測り直す
  • 1回の値に一喜一憂することなく、何度か測定した平均的な値を意識する

ようにして、自分の平均的な血圧を捉えるようにしましょう。

注1)ABPM(Ambulatory blood pressure monitoring)と呼ばれ、簡易の血圧計を24時間付けたままにして、15-30分間隔で24時間血圧を測定することです8

4.日々の血圧は「家庭血圧」の基準を目安にする

これまでの内容から

  • 血圧は症状で判断しない。あくまで血圧の“値”で判断する
  • 血圧は1回の測定で判断しない。何度か測定した平均的な値で捉える

ということをご理解いただけたかと思います。

では、血圧の目安はどの程度なのでしょうか。

下の図は日本における血圧の分類です(2024年7月時点)9

The thresholds of BP in JPN
高血圧治療ガイドライン2019を基にInefable作成

細かい分類は気にしなくてよいのですが、これを見ると、「診察室血圧」と「家庭血圧」で二分されていることがわかります。

「診察室血圧」とは、下図のように、診察室で、典型的には聴診器と水銀血圧計注2)を用いて医療従事者により測定される血圧です。今では目にすることが少なくなりました。

measuring BP in an office
診察室における血圧測定のイメージ

血圧を測る機会は診察室より家庭やジム、薬局、役所などの自動血圧計で測ることが多いと思いますが、この場合の血圧値が家庭血圧です。

診察室以外で見かける自動血圧計

「家庭」というと自宅だけかと思いがちですが、元々この基準値は「診察室以外で自ら測定する血圧(自己測定血圧)」として設定された値です10。ですから、診察室以外で測る血圧値は家庭血圧の基準値を参照して、自分の血圧がどのくらいなのかを把握するようにしましょう。

実は、診察室血圧は家庭血圧と比べて白衣効果などにより血圧が上昇しやすく、家庭血圧は診察室血圧より正しい値を得られやすい、血圧によるリスクとの関わりが強いと報告されている優れものなのです11

注2)2021年以降、水銀の環境汚染の問題から、水銀含有製品の製造・輸出入が禁止されています12

5.「前高血圧(prehypertension)」の前から備え始める

「それじゃあ、家庭血圧で高血圧の基準を下回っていれば安心だね」

実はそうとも言い切れません。

先の表を見てみると、正常高値・高値血圧なる「正常と高血圧の間」が存在しています。この範囲にその答えが隠れています。

そもそも、高血圧基準の背景にあるのは「病気のリスク」です。

高血圧の基準値は「症状がすぐに現れる値」ではなく「病気のリスクが年単位で高まる値」ということを、「高血圧は、症状ではなく『値で判断』する」で述べましたが、「正常と高血圧の間」の血圧でもリスクの高まる可能性があることが、数多くの研究からわかってきています。

前高血圧(prehypertension)とも呼ばれる「正常と高血圧の間」の範囲にある人は、正常の範囲の血圧に人に比べて、狭心症・心筋梗塞、脳卒中、慢性腎臓病(末期腎不全を含む)のリスクが高いと報告されています13

当然、前高血圧よりも高血圧の人の方が、さらには、高血圧でも程度(重症度)の高い人が、病気のリスクは上がりますが、これらを踏まえると、

「高血圧基準には達しないようにする。できれば、前高血圧(正常高値・高値)よりも下回る」

ことでリスクをより減らすことが期待できるというわけです。

ーーーーー

「なぜ、高血圧の基準を下回っているのに、リスクが上がるの?」

そのように思われる方もいるでしょう。その理由は、血圧と病気のリスクの歴史に目を向けると明らかになってきます。

「血圧」というのは120、121、122・・・というように、連続的で途切れのないものです。世の中には、様々な血圧値の人がいて、血圧が高い人ほどリスクは高くなりますが、例えばインフルエンザ陽性・陰性のように「血圧はこの値ならOK、これ以上ならリスク」と明確に区分できるものではないのです14

また、「【血圧測定】「一時点・1回の測定」で判断しない」の図を見ても分かるように、一人の人でも、血圧は常に細かく変動しています。このような状況を踏まえても、明確に境するのは難しいと想像できます。

その一方で、血圧と病気のリスクとの関係を明らかにするためには、何らかの「明確な基準」を設けて研究を行わなければなりません。そこで、それ以前の研究結果を踏まえた「恣意的な区切り」を設定して血圧と病気のリスクを検証してきた歴史があるのです(このことは血圧以外に明確に境を設定しにくい他の病気、例えばダイアベティス(糖尿病)などでも言えることです)。

ですから、世界の高血圧の歴史を見ると、

  • 〜1950年代:「高」血圧の基準は明らかではない
  • 1950年代〜:(診察室血圧)160/95mmHg以上を高血圧と設定
  • 1990年代〜:(診察室血圧)140/90mmHg以上を高血圧と設定

のように、恣意的に設定された区切りを基に血圧と病気のリスクとの関係が明らかになり、その度に基準値が変更されてきているのです。さらに、その後の研究結果の蓄積によって、(診察室血圧)140/90mmHgより低い前高血圧(prehypertension)でもリスクが上がることがわかってきたのです。

これらを踏まえると、今後、日本における高血圧基準が低く設定し直される可能性もあると思いますが注3)、「病気のリスクを減らす」という視点からは、基準の値がどうであれ、

「高血圧基準には達しないようにする。できれば、前高血圧(正常高値・高値)よりも下回る」

と捉えておくことが妥当であり、そうすれば、たとえ基準が変わっても慌てることはありません。

高血圧治療ガイドライン2019を基にInefable作成

上の図にあるように、日本における現時点での正常血圧は、

  • 診察室血圧で「120/80mmHg未満」
  • 家庭血圧で「115/75mmHg未満」

です。

ーーーーー

補足になりますが、家庭血圧の基準値も今後、変わる可能性があると考えられます。

実は、上の図の家庭血圧基準値ですが、2000年に設定されたあくまで参照値であり15、その後の家庭血圧と病気のリスクとの関係を調査する研究の蓄積によって、最新の報告では、

  • 家庭血圧135/85mmHg以上ではなく130/85mmHgが、高血圧に相当
  • 家庭血圧115/75mmHg未満ではなく120/75mmHgが、正常血圧に相当

とも言われています16

この内容を踏まえると、診察室以外(家庭・ジム・薬局・役所等)で測る場合は、

  • (家庭血圧)130-135/85mmHgを上回ると高血圧の可能性があり
  • (家庭血圧)115-120/75mmHg未満が理想的注4)

と捉え、高血圧基準の「前から」備え始めることが、病気のリスクを減らすためには効果的です注5)

注3)国外に目を向けてみると、例えば、米国では2017年以降、高血圧基準を(診察室血圧)140/90mmHgから130/80mmHgに変更するなど変化が生じてきています17

注4)115-120/75mmHg未満とは、血圧を測った時の上の血圧(収縮期血圧)が115から120を超えない、下の血圧(拡張期血圧)が75を超えないということです

注5)年齢を重ねると血圧が病気に及ぼすリスクは相対的に少なくなること、治療によるデメリットも増えてくるため、治療目標も緩やかになります18

高血圧を予防するべき3つの理由

1.高血圧は多くの人にとって「身近な病気」

It's estimated that about half of population in JPN has HT.

「日本人のおよそ2人に1人が高血圧」

このような話を聞いたことがあるかもしれませんが、本当のところはどうなのでしょう。

高血圧治療ガイドライン2019(日本高血圧学会)には、高血圧のある患者さんの推計数は4,300万人(2017年)と記載されています19

日本の20歳以上人口はおよそ1億人(2024年2月1日現在で1億456万人20)であることを考えると、「日本人のおよそ2人に1人が高血圧」という話もあながち間違いではありません

さらに、先ほど話した前高血圧(prehypertension)の存在も考えると、さらに多くの人が含まれるため、高血圧はほとんどの人が対策をして損はない病気であると考えることができます。

ですから、高血圧に対して予防的に行動することは、多くの人にとって効果的と言えるでしょう。

2.高血圧は「先にある血管リスク」を高める

Looking forward

「高血圧は、ただ血圧が高くなるだけで症状もない。私たちには何の影響も及ぼさない」

そのようなものであれば、診断・加療をする意味はないでしょう。

高血圧の初期は症状がないことが多いため、実際に高血圧と診断された方も「これって治療する意味があるの?」と感じる人がいるのではないでしょうか。

ですが、高血圧の本当の問題点は、高血圧それ自体ではなく、先にある問題なのです。

「高血圧それ自体ではない」と言うのは、高血圧が私たちの生活に影響を及ぼすのは、その大半が「高血圧による臓器障害」である(いわゆる高血圧合併症)ということです。

高血圧の影響を受ける主な臓器は下図の通りです21

Hypertension mediated organ damage
高血圧の影響を受ける代表的な5臓器

この図のように血管は全身に張り巡らされており、高血圧は血管(血圧)と関係が強い臓器に影響を及ぼしますので、高血圧は「血管リスク」を高めると言うことができます。

代表的な病気としては、

  • 脳:脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)
  • 心臓:狭心症・心筋梗塞
  • 腎臓:慢性腎臓病(末期腎不全を含む)

があり、いずれも私たち日本人にとって頻度が高い病気です。

しかも、このような高血圧による臓器障害の多くは、高血圧になってすぐに発症するものではなく、高血圧が続くと何年か経った後で出現します。

もちろん、高血圧の“程度”や個人差などで異なりますが、1,2年後に発症する人もいれば、人によっては10数年後に発症する人もいるということなのです。

例えば、「40歳の時に高血圧と診断され、50歳の時に脳梗塞を発症した。この脳梗塞は高血圧が主な原因である可能性が高い」と言われても、発症から10年のタイムラグがある関係性を直感的に感じることは容易ではありません。ですが、高血圧が発症までにタイムラグのある様々な病気のリスクを高めているのは事実なのです。

このように、高血圧は、

「高血圧自体による症状を管理する」ためではなく、

「先にある」「高血圧自体以外の問題(臓器障害)」のために、

予防する価値があるのです。

3.高血圧は、必ずしも「年のせい」ではない

A day of a business person
日々の暮らしが、高血圧のリスクを左右している

「年を重ねると高血圧になるのはしょうがない」

これは果たして事実なのでしょうか。

高血圧は、下に示すように、原因によって大きく2つに分けられています22

本態性高血圧:加齢、遺伝、食事、身体活動など複数のファクターによる
二次性高血圧:睡眠時無呼吸症候群や原発性アルドステロン症など、特定の原因による

高血圧の多く(80%以上)は本態性高血圧と呼ばれる、複数のファクターが関わっている病気です23

皆さんがよく耳にする高血圧は、一般的には「本態性高血圧」のことを指しています。

そして、本態性高血圧に関わるファクターとして年齢(加齢)があることは明らかです24

一方で、「食塩は血圧を上げる」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、年齢や遺伝以外のファクターの関わりもあることがわかっています。

これはどう言うことかと言うと、

「高血圧は年のせいだけではない」ということであり、

私たちの日々の行動で、高血圧のリスクが変わる」と言うことなのです。

実際に、厚生労働省における調査結果を見ても、血圧を下げる薬を使用せず120/80mmHg未満を達成している人は20代で75%、30代で72%、40代で51%、50代で32%、60代で14%と、年齢とともに減ってはいますが、正常血圧を維持することは決して不可能なものではなく、年のせいだけはないということは明らかです(令和元年国民健康・栄養調査)25

多くの人にとって身近な病気であり、血管リスクを高める病気である高血圧のリスクを、日々の行動で減らすことができるのであれば、行うに越したことはありません。

高血圧を防ぐポイント

前の記事で述べているように、高血圧が発症する原因は、遺伝や加齢、その他の病気が関わることもあるので、高血圧のリスクをゼロにするのは現実的に難しいことです。

しかし、高血圧の多くを占め、私たちの普段の行動が関わる本態性高血圧に対して予防する(発症リスクを減らす)ことはできます。

ここでは、高血圧を予防する(発症リスクを減らす)ポイントをまとめます。

1.「複数のファクター」へのアプローチが鍵

高血圧の予防でまず押さえておきたいのは、「複数のファクター」へのアプローチです。

高血圧の多くを占める本態性高血圧は、他の多くの病気と同様に、発症に複数のファクターが関わっている「多因子性疾患」です。

ですから、「1つだけのファクターに対処しても予防効果は限定的」であり、複数のファクターに対してトータルマネジメントを行うことで発症予防の効果が高まります

「血圧には食塩を控えることが大事だと聞いたから、少なめにしているよ」

そのような心がけはとても大切ですが、他のファクターにも対処することで、さらにリスクを減らすことができるのです。

本態性高血圧の発症と関わり、かつ、私たちの日々の行動が関わる主なファクターは以下の通りです26

  • 肥満や体重変化
  • 食事(食塩を含む)
  • 身体活動
  • 飲酒

さらには、睡眠(短すぎるあるいは長すぎる睡眠時間)もリスクを高めると報告されています27

高血圧を予防する(発症リスクを減らす)には、関わりのある「複数のファクター」へのアプローチが鍵となることを押さえましょう。

2.「科学的根拠」をもとに、行動する

予防効果を高めるには、「科学的根拠に基づいた」目安・目標が欠かせません。

その理由は、予防する(発症リスクを減らす)ということは「研究結果を踏まえて、言えることだから」です。

例えば、先ほど挙げた「肥満や体重変化」「食事(食塩を含む)」「身体活動」「飲酒」について科学的根拠を基に管理すると、収縮期血圧が約25mmHg(高血圧の人)あるいは12-15mmHg(正常血圧の人)ほど低下すると報告されています28

また、高血圧治療中の人の場合ですが、収縮期血圧を10mmHg(あるいは拡張期血圧を5mmHg)下げると、病気の発症リスクが、脳卒中で30-40%、狭心症・心筋梗塞で約20%、心不全で約40%低下するという報告もあります29

「高血圧予防に○○」

「減塩効果を高める●●」

一見、魅力的に映るフレーズも、どんな根拠に基づいて、どのくらい効果があるのかを確かめることが大事です。

そもそもしっかりとした根拠(証拠)がなければ、効果が期待できない可能性があります。

根拠がある場合には、「どのくらいのお金を払って」「どのくらいの期間で」「どのくらいの効果が期待できるのか」を確かめるとよいでしょう。

「高いお金を払ったけど、期待した効果が得られなかった」

「何年も続けていたけど、時間をムダにしてしまった」

そのようなことにならないように、皆さんが期待する効果が得られるものなのか、しっかり確かめることをオススメします。

3.「できるだけ早く」から取り組む(The sooner, the better)

高血圧になる『前から』備え始める」で述べているように、高血圧だけではなく、「正常と高血圧の間」の前高血圧でも病気のリスクが上がることがわかっています。

ですから、血圧が正常である時から予防に向けた取り組みをしておくことが予防効果を高めます。

「気づいた時から」

「この記事を目にした時から」

少しずつでも始めることが、5年後、10年後、振り返った時に、皆さんに大きな価値をもたらしていることでしょう。

『どうせ予防するなら』高血圧だけではなく、他の病気も予防したい」という方には、こちらの記事もオススメです。

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参考情報

  1. Middeke M, Lemmer B, Schaaf B, Eckes L. Prevalence of hypertension-attributed symptoms in routine clinical practice: a general practitioners-based study. J Hum Hypertens 2008; 22: 252–8., Kowalski S, Goniewicz K, Moskal A, Al-Wathinani AM, Goniewicz M. Symptoms in Hypertensive Patients Presented to the Emergency Medical Service: A Comprehensive Retrospective Analysis in Clinical Settings. J Clin Med 2023; 12. DOI:10.3390/jcm12175495. ↩︎
  2. 高血圧治療ガイドライン2019 日本高血圧学会 https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_noprint.pdf(accessed on Jul 22 2024) ↩︎
  3. Rossi GP, Rossitto G, Maifredini C, et al. Management of hypertensive emergencies: a practical approach. Blood Press. 2021; 30: 208–19. ↩︎
  4. 高血圧治療ガイドライン2019 日本高血圧学会 https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_noprint.pdf(accessed on Jul 22 2024) ↩︎
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  7. 高血圧治療ガイドライン2019 日本高血圧学会 https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_noprint.pdf(accessed on Jul 22 2024) ↩︎
  8. 高血圧治療ガイドライン2019 日本高血圧学会 https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_noprint.pdf(accessed on Jul 22 2024) ↩︎
  9. 高血圧治療ガイドライン2019 日本高血圧学会 https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_noprint.pdf(accessed on Jul 22 2024) ↩︎
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  13. Yano Y, Fujimoto S, Sato Y, et al. Association between prehypertension and chronic kidney disease in the Japanese general population. Kidney Int 2012; 81: 293–9., Li Y, Xia P, Xu L, Wang Y, Chen L. A Meta-Analysis on Prehypertension and Chronic Kidney Disease. PLoS One 2016; 11: e0156575., Leiba A, Twig G, Vivante A, et al. Prehypertension among 2.19 million adolescents and future risk for end-stage renal disease. J Hypertens 2017; 35: 1290–6., Huang Y, Cai X, Zhang J, et al. Prehypertension and Incidence of ESRD: a systematic review and meta-analysis. Am J Kidney Dis 2014; 63: 76–83., Lee M, Saver JL, Chang B, Chang K-H, Hao Q, Ovbiagele B. Presence of baseline prehypertension and risk of incident stroke: a meta-analysis. Neurology 2011; 77: 1330–7., Huang Y, Cai X, Li Y, et al. Prehypertension and the risk of stroke: a meta-analysis. Neurology 2014; 82: 1153–61., Huang Y, Cai X, Liu C, et al. Prehypertension and the risk of coronary heart disease in Asian and Western populations: a meta-analysis. J Am Heart Assoc 2015; 4. DOI:10.1161/JAHA.114.001519., Han M, Li Q, Liu L, et al. Prehypertension and risk of cardiovascular diseases: a meta-analysis of 47 cohort studies. J Hypertens 2019; 37: 2325–32., Guo X, Zhang X, Guo L, et al. Association between pre-hypertension and cardiovascular outcomes: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. Curr Hypertens Rep 2013; 15: 703–16., Huang Y, Wang S, Cai X, et al. Prehypertension and incidence of cardiovascular disease: a meta-analysis. BMC Med 2013; 11: 177. ↩︎
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