多くの方が定期的に受けている健診、検診、あるいは人間ドック。
「健診・検診・人間ドックにはどんな違いがあるのだろう」
「そもそも健診ってどんなものなの?」
この記事ではまず、健診・検診・人間ドックの中でも中心的存在である「健診」について年齢とともに振り返ります。
また、多くの人が気になる健診・検診・人間ドック違いについても、わかりやすくまとめています。
ご自身の年齢を思い浮かべながら、また、これまで受けてきた健診を思い出しながら、ご覧ください。
これから健診・検診・人間ドックを受ける際の参考になれば嬉しいです。
※この記事は、医師監修の下、適切な情報に基づいて作成されています。具体的な情報源に関しては、本記事下部の「参考情報」をご確認ください。
健診の目的は、「健康への自主性を促す」こと
「健診て何のためにするの?」
まずは健診の「目的」について、確かめていきましょう。
健診は『健康診査』の略称であり、「健康」を「診査」するものです。
「健康」に対する考え方や行動に個人差がありますが、実は「健康への認識と行動」は国民の責務として健康増進法の中に記載されています。
(国民の責務)
健康増進法(平成十四年法律第百三号)https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103#Mp-Ch_1-At_2
第二条
国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない。
簡単に言うと、「日本の国民であるからには、健康への関心と理解を深め、自らの健康状態の自覚と増進をするつとめがありますよ」と、国として宣言しているのです(もちろん、宣言されているからと言って、どう行動するかは個々人によりますが)。
そして、健診についても以下のような記載があります。
(健康診査の実施等に関する指針)
健康増進法(平成十四年法律第百三号)https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103#Mp-Ch_2-At_9
第九条
厚生労働大臣は、生涯にわたる国民の健康の増進に向けた自主的な努力を促進するため、健康診査の実施及びその結果の通知、健康手帳(自らの健康管理のために必要な事項を記載する手帳をいう。)の交付その他の措置に関し、健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針(以下「健康診査等指針」という。)を定めるものとする。
つまり、健診の目的は「『健康』増進の自主性を促進する」ことであり、健診は「健康をサポートする1つのツール」なのです。
実は、この健診の目的は健診の意味(効果)に通じているのですが、健診の意味(効果)や注意点を知る前に、「何歳だとどんな健診があるのか」年齢とともに振り返ってみたいと思います。
生まれてから、年を重ねるまで〜「システム」化された健診を振り返る〜
日本に住んでいる私たちは、事あるごとに「健診(健康診査)」を受けています。
受ける側が何ら準備するわけでもなく、強く希望しているわけでもないのに「健診」を受けるのは、なぜなのでしょうか。
それは、「法に基づいてシステム化(制度化)されている」からです。
日本では、主に年齢によって受ける健診が異なります。
乳幼児期の健診
「お母さんが小さなお子さんを『健診』に連れて行く」
あるいは
「皆さん自身が小さい頃に病院やクリニックに『健診』に行った」
これらの「健診」は母子保健法に基づいたものです。
乳幼児期の健診は、下記条文にあるように「1歳6ヶ月と3歳」の他、必要に応じて「1ヶ月」「3−4ヶ月」「9−10ヶ月」に行われることが一般的です。
(健康診査)
母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000141/#Mp-Ch_2-At_12
第十二条
市町村は、次に掲げる者に対し、内閣府令の定めるところにより、健康診査を行わなければならない。
一 満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児
二 満三歳を超え満四歳に達しない幼児
第十三条
前条の健康診査のほか、市町村は、必要に応じ、妊産婦又は乳児若しくは幼児に対して、健康診査を行い、又は健康診査を受けることを勧奨しなければならない。
ご自身の「母子健康手帳」をお持ちであれば、小さい頃の「健診」について、記録されているのではないでしょうか。
小児・青年期の健診
幼稚園や小学校に入る年齢になると、学校保健安全法に基づいた健診を受けることになります。
学校(幼稚園〜大学まで)では毎学年、そして小学校に入る時には「就学時の健康診断」を行うことになっているのです。
(就学時の健康診断)
学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号)https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000056#Mp-Ch_2-Se_3-At_11
第十一条
市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、学校教育法第十七条第一項の規定により翌学年の初めから同項に規定する学校に就学させるべき者で、当該市町村の区域内に住所を有するものの就学に当たつて、その健康診断を行わなければならない。
(児童生徒等の健康診断)
第十三条
学校においては、毎学年定期に、児童生徒等(通信による教育を受ける学生を除く。)の健康診断を行わなければならない。
「元気なのに、なんで健診受けるの?」
在学時にこのように思われた方もいるかもしれませんが、その理由は「法令で定められているから」なのです。
成人期の健診
妊娠・出産に関する健診
成人期の一般的な健診の話をする前に、妊娠・出産と関わる健診についてまとめます。
妊娠や出産をする女性の方のために、母子保健法の基づいた妊産婦健診があります。母子保健法は先に示した乳幼児期の健診とともに、妊娠・出産時健診の基になっているのです。
下の条文にあるように、各市町村で体制を整えておりますので、詳細はお住まいの市町村(ウェブサイト)で確認しましょう(妊娠してお住まいの市町村に妊娠届を出す時に案内されることが一般的です)。
(健康診査)
母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000141#Mp-Ch_2-At_13
第十三条
前条の健康診査のほか、市町村は、必要に応じ、妊産婦又は乳児若しくは幼児に対して、健康診査を行い、又は健康診査を受けることを勧奨しなければならない。
39歳までの健診
学業を終え、社会人として働き出す年齢は人それぞれ。18歳あるいはそれより早い時期から始まる人もいれば、24歳あるいはそれ以降で始まる人もいます。
いずれにしても、「学校」を出た後でどのように「健診」を受けるのかは、状況によって異なります。
❶会社に所属する場合(いわゆる会社員)
最も多いのが、会社員として会社に所属して働くパターンではないでしょうか。
この場合は、労働安全衛生法に基づいた健診を受けます。
その理由は、「事業者(会社)は労働者(会社員)に健康診断を行う」ことが労働安全衛生法に明記されているからです。
(健康診断)
労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057#Mp-Ch_7-At_66
第六十六条
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
「なぜ、職場を変える時に毎回、健診を受けるのだろう」
「なんで、年1回、健診があるのだろう」
これは、規則にあるからです。
下に示すように、労働安全衛生規則には、「雇入時」「年1回」とより具体的に記載されています。
初めて会社に勤める時や職場を変えた時に健診をしたり(雇入時の健康診断)、職場で年1回健康診断を行ったり(定期健康診断)するのは「規則」によるものなのです。
(雇入時の健康診断)
第四十三条
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。(定期健康診断)
労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032#Mp-Pa_1-Ch_6-Se_1_2-At_44
第四十四条
事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
これら以外にも、特定業務の従事している方、海外派遣の方、給食従業員など、それぞれに実施が義務付けられている健診がありますが1、いずれにしても、会社に所属している限りは、会社(事業者)が健康診断をマネジメントすることになっています。
❷会社に所属しない場合(自営業、経営者、個人事業主、フリーランス、パートタイマーなど)
一方、会社に所属しない、あるいは自分で事業を行っている場合は、労働安全衛生法の対象外となりますので、自分自身の健診を自らマネジメントする必要があります。
この場合、国民健康保険制度(国保)に加入することになりますが、以下の記載が国民健康保険法にあるように、各市町村において基本的な健康診査を実施していますので、自ら、申し込むことで健診を受けることができます。
第八十二条
国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192#Mp-Ch_6
市町村及び組合は、特定健康診査等を行うものとするほか、これらの事業以外の事業であつて、健康教育、健康相談及び健康診査並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者の自助努力についての支援その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な事業を行うように努めなければならない。
多くの場合、助成によって、自費で健診を受ける場合に比べて自己負担額を少なく健診を受けることができますので、皆さんが住んでいる自治体のウェブサイトを確かめてみるとよいでしょう。
40歳から74歳の特定健診(相当)
「特定健診て何?」
「定期健診と何が違うの?」
「特定健診」は、「特定の病気」にフォーカスした健診で、「高齢者の医療の確保に関する法律」が基になっています。
(特定健康診査)
高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)https://laws.e-gov.go.jp/law/357AC0000000080#Mp-Ch_2-Se_2-At_20
第二十条
保険者は、特定健康診査等実施計画に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、四十歳以上の加入者に対し、特定健康診査を行うものとする。ただし、加入者が特定健康診査に相当する健康診査を受け、その結果を証明する書面の提出を受けたとき、又は第二十六条第二項の規定により特定健康診査に関する記録の送付を受けたときは、この限りでない。
法律で「40歳以上」と明記されているので、特に希望しなくても「40歳」になると「特定健診(特定健康診査)」を受けるよう、案内が送付されてくるのです。
ですから、成人期の健診を大まかに言えば「39歳までは定期健診を受け、40歳を過ぎると特定健診を受ける」ことが一般的な流れになります。
「特定」の病気は「メタボ」
「特定健診」における「特定」の病気は「メタボ(メタボリックシンドローム)」です。
日本では、健診制度を含めて、国として健康づくり対策を進めてきましたが、その中で、ダイアベティス(糖尿病)有病者・予備群の増加などの課題が浮き彫りになり、その解決策として、2008(平成20)年4月から特定健診が実施されるようになりました2。
すなわち、特定健診はダイアベティス(糖尿病)や高血圧、脂質異常症の基盤にある「『内臓脂肪蓄積』とそれによるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目して行われる健康診査」なのです。
リスクの高い人のための「特定保健指導」
特定健診の結果、リスクが高いと判断された人には「特定保健指導」の案内がきます。
実はこの基準も定められています。
(特定保健指導の対象者)
特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準(平成十九年厚生労働省令第百五十七号)https://laws.e-gov.go.jp/law/419M60000100157#Mp-At_4-Pr_1
第四条
法第十八条第一項に規定する特定健康診査の結果により健康の保持に努める必要がある者は、特定健康診査の結果、腹囲が八十五センチメートル以上である男性若しくは腹囲が九十センチメートル以上である女性又は腹囲が八十五センチメートル未満である男性若しくは腹囲が九十センチメートル未満である女性であってBMIが二十五以上の者のうち、次の各号のいずれかに該当するもの(高血圧症、脂質異常症又は糖尿病の治療に係る薬剤を服用している者を除く。)とする。
一 血圧の測定の結果が厚生労働大臣が定める基準に該当する者
二 血清トリグリセライド(中性脂肪)又は高比重リポ蛋たん白コレステロール(HDLコレステロール)の量が厚生労働大臣が定める基準に該当する者
三 血糖検査の結果が厚生労働大臣が定める基準に該当する者
2 第一条第三項の規定により、腹囲の検査に代えて内臓脂肪の面積の測定を行う場合には、前項中「腹囲が八十五センチメートル以上である男性若しくは腹囲が九十センチメートル以上である女性又は腹囲が八十五センチメートル未満である男性若しくは腹囲が九十センチメートル未満である女性であってBMIが二十五以上の者」とあるのは、「内臓脂肪の面積が百平方センチメートル以上の者又は内臓脂肪の面積が百平方センチメートル未満の者であってBMIが二十五以上のもの」とする。
要するに、「腹囲あるいはBMI(体格指数)」と「血圧」「血中脂質」「血糖」でリスクが高いと判断されているということで、メタボ(メタボリックシンドローム)の診断基準と近い基準になっています。
「生活習慣病予防健診」は特定健診「相当」の健診
「会社から『生活習慣病予防健診』の案内が来るけど、特定健診と何が違うの?」
ここで、特定健診と関わりの深い「生活習慣病予防健診」について、簡単にお話しします。
生活習慣病予防健診は、いわば特定健診「相当」の健診です。ですから、受ける場合には「特定健診あるいは生活習慣病予防健診を受ける」ことになります。
後述するように、どちらを受けるかは皆さんが勤めている会社によりますので、自分で選ぶものではありません。
「生活習慣病健診が特定健診とどのように違うのか」以下に主なポイントをまとめましたので、興味がある方はご覧ください(詳細や最新の情報については、全国健康保険協会(協会けんぽ)のウェブサイトでご確認いただくようお願いいたします)。
特定健診との違い① 全国健康保険協会(協会けんぽ)による健診
生活習慣病予防健診は、全国健康保険協会(協会けんぽ)が実施している、生活習慣病の発症や重症化の予防を目的とした健診であり3、特定健診と目的が近似しています。
下に示す法律内の記述「特定健康診査に相当する健康診査を受け・・・中略・・・この限りでない。」にあるように、特定健診の代わりに特定健診「相当」の健診を受ければよいため、皆さんが勤めている会社(事業所)が全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している場合、特定健診ではなく生活習慣病予防検診を受けることになります4。
(特定健康診査)
高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)https://laws.e-gov.go.jp/law/357AC0000000080#Mp-Ch_2-Se_2-At_20
第二十条
保険者は、特定健康診査等実施計画に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、四十歳以上の加入者に対し、特定健康診査を行うものとする。ただし、加入者が特定健康診査に相当する健康診査を受け、その結果を証明する書面の提出を受けたとき、又は第二十六条第二項の規定により特定健康診査に関する記録の送付を受けたときは、この限りでない。
それとは逆に、
- 勤めている会社(事業所)が全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入していない
- 会社に所属していない(自営業、経営者、個人事業主、フリーランス、パートタイマーなど)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している会社(事業所)から加入していない会社(事業所)に転職した
場合には、生活習慣病予防健診ではなく特定健診を受ける案内が送付されてきます。
要は自分の所属や状況次第で受ける健診が変わるということです。
特定健診との違い② 対象は35歳から
特定健診は40歳以上が対象ですが、生活習慣病予防健診は35歳から対象となっています5。
ですから、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している会社に勤めている人には35歳から生活習慣病予防健診の案内が送付されてきます。
「40歳になっていないのになぜ『生活習慣病予防健診』の案内が来るの?」
その答えは、「全国健康保険協会(協会けんぽ)が生活習慣病予防健診の対象を35歳としているから」ということになります。
特定健診との違い③ 5大がんをカバー
生活習慣病予防健診は5大がんと言われる(肺がん・胃がん・大腸がん・子宮がん・乳がん)を(一部は、追加の費用負担による追加健診で)カバーしています6。
特定健診はあくまで「メタボ(メタボリックシンドローム)」に着目した健診ですので、がんをカバーするには、別途、がん「検診」を受ける必要があります。
ただし、生活習慣病予防健診にしても特定健診にしても、申し込みさえすれば5大がんの検査を受けられるということではなく、いずれも自分で選択をする一手間が必要になりますので、受ける際には十分な確認をするようにしましょう。
(参考)「生活習慣病」という表現はNG?!
生活習慣病という表現は、脳卒中、がん、心臓病、ダイアベティス(糖尿病)、高血圧、脂質異常症、歯周病、慢性閉塞性肺疾患(以前の肺気腫)などを含んでいます。
実はこれらの病気は、生活習慣以外に年齢や遺伝など、生活習慣以外も関わっていることが多く、表現として適切とは言えません。
また、生活習慣以外の関わりがあるにも関わらず「病気になったのは生活習慣が乱れているからだ」のような人によっては必ずしも該当しないスティグマ(不名誉・烙印)をもたらす表現とも考えられており、JADEC(日本糖尿病協会)では、使用を控えるべき言葉とされています7。
とは言っても、「生活習慣病」という表現は日本の根拠法令にもいまだに存在している表現あり、厚生労働省や「生活習慣病予防健診」などと散見されることも事実です。したがって、それらに言及する際には用いざるを得ないこともありますが、弊社では極力、使用を控え、個別の病名で記すようにしています。
75歳からの健診
75歳を超えてからの健診は「長寿健診(長寿健康診査)」であり、「高齢者の医療の確保に関する法律」が基になっています。
基本的には、年1回実施されており、項目は特定健診とほぼ同様です8。
(高齢者保健事業)
高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)https://laws.e-gov.go.jp/law/357AC0000000080#Mp-Ch_4-Se_5-At_125
第百二十五条
後期高齢者医療広域連合は、高齢者の心身の特性に応じ、健康教育、健康相談、健康診査及び保健指導並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者の自助努力についての支援その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な事業(以下「高齢者保健事業」という。)を行うように努めなければならない。
検診は「病気」を見つけるツール
これまで述べてきた「健診」と、「検診」の違いは何でしょうか。
「検診」は健康よりも「病気」を念頭に置いて行なわれます。
検診は、健康増進法(第19条の2)における健康増進事業の1つとして、市町村により実施されています。
(市町村による健康増進事業の実施)
健康増進法(平成十四年法律第百三号)https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103#Mp-Ch_4-At_19_2
第十九条の二
市町村は、第十七条第一項に規定する業務に係る事業以外の健康増進事業であって厚生労働省令で定めるものの実施に努めるものとする。
検診の対象年齢の方には、お住まいの市町村から案内状が送付されているのではないでしょうか。検診項目にもよりますが、20歳以上の特定の年齢(20歳、40歳、50歳など)で対象となることが一般的です。
具体例は以下になります。
なお、歯周病検診の対象年齢ですが、2024年4月以降、従来の40歳以上から20歳以上に変更されています11。
「検診」は、「健診」の項目と比べると、明らかに病気が絞られていること、また、先の健診の項目には含まれていない内容が行われ、健診とは区別されていることが特徴です。
したがって、一般的には「健診か検診を受ける」ではなく「健診を受けつつ、必要に応じて検診も受ける」ということになります。例えば、特定健診+がん検診などのような形です。
ただし、先にお話しした特定健診の代わりの位置付けである「生活習慣病予防健診」は、国ではなく全国健康保険協会(協会けんぽ)によるものであり、検診と重複している検査もありますので、受ける際には項目を確かめるとよいでしょう。
人間ドックは20歳から受けられる「精密身体検査」
健診・検診と異なり、人間ドックに法的な背景はありません。
1937年(昭和12年)、「健康管理目的」に1週間の入院のもと全身の精密検査が行われたのが、その始まりとされています12。
1954年(昭和29年)には国立東京第一病院(現:国立国際医療研究センター病院)で1つのシステムとして人間ドックが始まり13、当時は「短期入院総合精密身体検査」と呼ばれていましたが、これがやがて「人間ドック」という名称として定着し、今に至ります。
人間ドックも現在では半日・1日・2日など様々な選択肢がありますが、要するに「人間ドック」は「短期」の「精密身体検査」に他なりません。
「精密身体検査」という言葉から想像されるように、健診よりも検査項目が多く、健診の項目に検査がプラスされていることが一般的です14(実際に受ける際には、検査項目を確認してください)。
そのため、通常は「健診や検診を受けて人間ドックを受ける」というのではなく、「健診・検診を受けるか人間ドックを受ける」ことになります。
項目は施設によって異なりますが、人間ドックの質の確保や統一を図るべく健診団体連絡協議会により決定された「基本検査項目(一日ドック・二日ドック)」が存在しており、日本人間ドック・予防医療学会で公開されています15。
一般的に、人間ドックは20歳以上であれば受診できるとされています16。
健診・検診・人間ドックの違い
ここまでまとめてきたように、健診・検診・人間ドックの違いを大まかにまとめると、
- 健診:生涯にわたる健康診査
- 検診:対象年齢を限定し「病気」を絞った検査
- 人間ドック:20歳以上の精密身体検査
のようになります。中でも、成人期の健診と検診・人間ドックは特に混乱しやすいので、項目の違いを表にまとめました(最新の詳細は参考情報をご確認ください)。
全体の流れは以下の通りです。
- 働き出したら、(基本)健診あるいは定期健診
- 40歳から特定健診(あるいは35歳から生活習慣病予防健診)
- 検診は年齢に合わせて、定期的に行う
- これらの代わりとして、20歳からは人間ドックを受診できる
あくまで作成時点での情報17を基にまとめていること、特に人間ドックは実施している施設によって差異があることから、受ける際には、受診する施設における項目を確認するようにしてください。
まとめー生涯にわたる健診
このように、日本において健診は、「健康」をサポートするツールとして「生まれてから年を重ねるまで」システム化されているのです。
ぜひ、皆さん自身のヘルスメンテナンスのために、これからもこの先も健診を役立てていきましょう。
ちなみに、健診・検診は法的な背景があるからと言って、必ずしも「義務」になっているものばかりではなく、「努力義務」に留まっているものもあります。すなわち、受けたくなければ受けないことが出来る健診もありますので、受診を希望される場合には、自ら積極的に行動することが大切です。
参考情報
- 労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~ 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- 「今後の生活習慣病対策の推進について(中間とりまとめ)」について 厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/09/s0915-8.html(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- 令和6年度(2024年4月~2025年3月)生活習慣病予防健診被保険者(ご本人)の皆さまへ 全国健康保険協会 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/honbu/kenshin/2024seikatupanfu.pdf(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- どんな健診があるの? 全国健康保険協会https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g4/cat410/sb4010/(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- 令和6年度(2024年4月~2025年3月)生活習慣病予防健診被保険者(ご本人)の皆さまへ 全国健康保険協会 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/honbu/kenshin/2024seikatupanfu.pdf(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- 令和6年度(2024年4月~2025年3月)生活習慣病予防健診被保険者(ご本人)の皆さまへ 全国健康保険協会 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/honbu/kenshin/2024seikatupanfu.pdf(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- 日本糖尿病学会・JADEC(日本糖尿病協会)合同 アドボカシー活動https://www.nittokyo.or.jp/modules/about/index.php?content_id=46(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- 後期高齢者医療制度における長寿・健康増進事業について 厚生労働省保険局高齢者医療課https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000094396.pdf(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- 歯周病検診マニュアル 2023 https://www.mhlw.go.jp/content/001253380.pdf(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- 「健康増進事業に基づく肝炎ウイルス検診等の実施について」の一部改正について 健発0519第2号 平成29年5月19日 厚生労働省健康局長https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/pdf/hourei-170519-1.pdf(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- 歯科保健課 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001223393.pdf(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- 三輪卓爾:総合健診淵源史(下).日医史誌 1985; 30: 406-29. ↩︎
- 日野原重明:自動化健診の現状と将来の展望.日健診誌 1975; 2: 4-9. ↩︎
- 健診(けんしん) e-ヘルスネット 厚生労働省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-093.html#:~:text=%E5%81%A5%E5%BA%B7%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%84%E3%81%AF%E5%81%A5%E5%BA%B7%E8%A8%BA%E6%9F%BB,%E8%A8%BA%E3%80%8D%E3%81%AB%E5%88%86%E3%81%91%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- 基本検査項目/判定区分 日本人間ドック・予防医療学会 https://www.ningen-dock.jp/other_inspection/ (accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- 人間ドックQ&A 日本人間ドック・予防医療学会https://www.ningen-dock.jp/public_faq/#:~:text=%E8%BF%91%E3%81%8F%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%A8,%E3%82%92%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(accessed on Nov 12 2024) ↩︎
- どんな健診があるの? 全国健康保険協会https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g4/cat410/sb4010/, 歯周病検診マニュアル 2023 https://www.mhlw.go.jp/content/001253380.pdf, 「健康増進事業に基づく肝炎ウイルス検診等の実施について」の一部改正について 健発0519第2号 平成29年5月19日 厚生労働省健康局長
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/pdf/hourei-170519-1.pdf, 歯科保健課 厚生労働省
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