【素朴なギモン】「透析にだけはなりたくない。どうしたらいい?」※医師監修記事

予防

【素朴なギモン】は、身近な疑問についてシンプルに答えていくシリーズです。

今回のギモンはこちらです。

「うちの父親が透析になり、週3回ほどクリニックに通っています。日々の生活は辛そうで『正直、透析にだけはなりたくない』と感じています。どうしたらいいのでしょうか?」

「透析を避けるには、どうすればいいか」

それではみていきましょう。

※この記事は、医師監修の下、適切な情報に基づいて作成されています。具体的な情報源に関しては、本記事下部の「参考情報」をご確認ください。

透析のリスクは、透析になる原因を確かめればわかる!

そもそも、透析になる原因が分からなければ、策の立てようがありません。

しかし幸いなことに、日本では慢性透析に関して定期的に調査が行われています(わが国の慢性透析療法の現況 一般社団法人 日本透析医学会 統計調査委員会)1

ですから、このデータを見れば「日本ではどのような原因で透析を行っている人が多いのか」がわかります。

透析原因の第1位は「ダイアベティス(糖尿病)」

それでは、実際に見てみましょう。

ずばり透析になる最多原因はダイアベティス(糖尿病)による「糖尿病性腎症」です。

皆さんも「ダイアベティス(糖尿病)には多くの合併症がある」と聞いたことがあるでしょう。その中の1つ「糖尿病性腎症」が透析になる原因で最も多いことがわかっています。

ですから

「透析を避けるためにはどうしたらいい?」

の回答は

まずダイアベティス(糖尿病)にならないことがリスクを減らす最善の手段」

ということになります。

下図は根拠となる調査結果ですが、茶色で示されている「糖尿病性腎症」が2022年末時点の慢性透析患者の原疾患で39.5%を占めている(およそ透析の5人に2人)ことがわかります2

出典:図 10 慢性透析患者 原疾患割合の推移,1983-2022 わが国の慢性透析療法の現況(2022 年12月31日現在)透析会誌56(12):473~536,2023

なお、図を見ればわかるように、糖尿病性腎症の割合は上昇〜横ばい傾向ですので、しばらく透析の最多原因にとどまる可能性が高いと言えるでしょう。

このようなことを含めても、「透析を避けたいなら、まずダイアベティス(糖尿病)にならないようにする」ことが最も効果的な対策になります。

ダイアベティス予防のコツについて知りたい方は併せてこちらもご覧ください。

透析を避けるためには「高血圧」にも気をつける

先の図をみると、ダイアベティス(糖尿病)以外も少しずつ増えている透析原因(ピンク色の線)があります。

「腎硬化症」と書かれていますが、これは「高血圧」が続いた結果、腎臓におきる障害です。

つまり、高血圧による合併症の1つですので、「高血圧を避ければ、腎硬化症による透析を回避することができる」と言えます。

腎硬化症は2022年末時点で透析原因の第3位ですので、「ダイアベティス(糖尿病)だけではなく、高血圧も避ける」ことで、透析のリスクはさらに低下します。

高血圧予防は下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。

まとめー透析を避けたいなら「ダイアベティス(糖尿病)と高血圧」を防ぐ

いかがでしたでしょうか。

「透析にだけはなりたくない。どうしたらいい?」

そのためにはまず「ダイアベティス(糖尿病)と高血圧にならないこと

これが最も効率的効果的な方法ということになります。

※先の図にある透析原因第2位の「慢性糸球体腎炎」ですが、実はこの原因は多彩であり、リスクを減らすことはなかなか難しいのが現状です3。ですが、幸いなことに、慢性糸球体腎炎自体は年々減少傾向にあります。ですので、それを除いた原因上位の「ダイアベティス(糖尿病)と高血圧」を避けることが、効率的効果的な方法と言えます。

  1. わが国の慢性透析療法の現況 一般社団法人 日本透析医学会 統計調査委員会
    https://www.jsdt.or.jp/dialysis/2227.html(accessed on Dec 21 2024) ↩︎
  2. わが国の慢性透析療法の現況(2022 年12月31日現在)透析会誌56(12):473~536,2023https://docs.jsdt.or.jp/overview/index.html(accessed on Dec 21 2024) ↩︎
  3. 糸球体腎炎 一般社団法人 日本腎臓学会 https://jsn.or.jp/general/kidneydisease/symptoms05.php(accessed on Dec 21 2024) ↩︎